「事業を始める前に押さえておきたい設計の視点」
事業の立ち上げを考える人の多くは、社員のやりがいや自由な働き方を思い描きます。しかし現実には、仕事に前向きな意味を見いだせず、消耗していく人が少なくありません。この差を生むのは、意欲や根性の違いではなく、仕事や組織の設計にあります。心理学では、仕事に対して活力と熱意を持ち、集中して取り組める状態をワーク・エンゲージメントと呼びますが、これは気持ちの問題ではなく、裁量の有無、納得できる評価、適切な支援などの環境条件と、自己効力感や回復力といった個人要素が組み合わさって生まれるものです。事業とは、自分が努力する場を用意することではなく、関わる人のエネルギーが循環し続ける仕組みを意図的につくる行為だと理解する必要があります。
一方で、人や組織は自然には変わりません。人は安定を好み、利益を得ることより損失を避けようとする性質を持っています。そのため、環境が徐々に悪化しても現状に適応し、変化の兆しに気づけなくなります。だからこそ、事業の立ち上げでは、危機感の共有、目指す方向の明確化、本音で意見を交わせる心理的安全性の確保が欠かせません・・・